”BAN”文化人放送局 著作権問題で一部活動停止

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 インターネット番組・文化人放送局の動画が23日、YouTubeから“BAN”処分を受け、一定期間活動停止となった。同サイトのXのアカウントが明らかにした。この日、当サイトが22日までに同局の著作権侵害の申し立て2件を行ったうちの1件のリクエストが通り、該当する動画が削除された。YouTubeの規約に従い、1週間、新規動画のアップやライブ配信が行えなくなるものと思われる。

◾️文化人放送局 Xで“BAN”報告

写真はイメージ(AIで生成)

 23日朝、YouTubeに提出済みであった当サイトの著作権侵害の申立てが認められ、文化人放送局の動画が1本削除された。YouTubeが文化人放送局の番組で用いられた写真が、当サイトが著作権を有する写真を無断使用したものと判断し、決定した。当サイトには早朝にこの決定が伝えられ、その時点で動画は削除されていた。午後0時50分に文化人放送局のX上にBANされたことを告げる投稿がなされた。

【応援お願いします】文化人放送局の動画が、諸事情でBANとなりました。いいね、フィードバックはもちろん、言論規制のないダイヤモンドクラブ登録や制作支援の応援お願いします。…以下略(文化人放送局@【安倍元総理の慰霊碑を暗殺現場に】日本を取り戻す番組制作!! 文化人応援企業を大募集中8月23日12時50分投稿

 著作権侵害は7月13日公開のThe Q&Aの「自公壊滅的惨敗へ…(略)…AbemaTVでクルド人擁護の田村淳氏が逃亡?」というタイトルの番組の中で行われた。7月8日にトルコに強制送還されたクルド人リーダーのユージェル・マヒルジャン氏を写した写真の無断使用であり、9分を過ぎた部分で21秒間使用されている(参照・文化人放送局に著作権侵害の疑い 動画削除申立て)。

◾️公式ペナルティの発動

 YouTubeではコミュニティガイドライン違反や著作権侵害の違反の場合のペナルティが定められている。これはコミュニティガイドライン違反に適用されるルールであるが、著作権ストライクもペナルティ内容は共通である(YouTube Help・Community Guidelines strike basics on YouTube)。

【英語の原文】

First Strike

If we find your content doesn’t follow our policies for a second time, you’ll get a strike.

This strike means you will not be allowed to do the following for 1 week:

・Upload videos or live streams

・Start a scheduled live stream

【和訳】

最初のストライク

このストライクを受けると、1週間は以下のことができなくなる:

・動画やライブ配信のアップロード

・予定されていたライブ配信の開始

 ストライクとはYouTubeがチャンネルに与える公式のペナルティのことで、1回目のストライクで上記の制裁を科される。著作権侵害とコミュニティガイドライン違反では若干、ペナルティの適用が異なる部分があり、前者は1回目からストライクとなり、後者は1回目は警告にとどまり、2回目で1ストライクとされる。それだけ著作権侵害の違反は重いということである。

 今回、1ストライクの通知が文化人放送局に届いたものとみられ、文化人放送局がXで“BAN”と表現したものと思われる。Xの投稿では「諸事情でBANとなりました。」としか書かれていないが、当サイトと著作権をめぐって問題が発生し、それが最初の決着がついたというのが真相である。

 当サイトではもう1本の動画についても著作権侵害による削除の申立てを行なっている。こちらは侵害部分の部分削除という形で文化人放送局が対応しており、YouTubeがどのような判断を下すかは分からないが、仮に著作権侵害が認められればペナルティが延長される可能性はある。

◾️重大な違反の認識が欠落か

 著作権侵害という重大な違反行為が行われたが、文化人放送局の対応を見ていると、その重大性を認識しているとは思えない部分がある。侵害行為を発見した後に同局とメールでやり取りを行ったことは昨日も伝えたが、その内容には首を捻らざるを得なかった。

 こちらの著作権侵害の指摘に対して送られてきたメールは、誤って編集担当が使用した、該当部分は削除した、お詫び申し上げる、というものであった。ところが、差出人は「文化人放送局」と同局のHPのアドレスが書かれているだけで、誰が出したものか示されていなかった。責任の所在をはっきりさせないまま「担当者が間違っちゃった、ごめんね」という趣旨のメールを出されても、納得できる人間などいない。

 すぐに「ご回答をいただき、ありがとうございます。まず、差出人の氏名、所属、御社での役職が明記されていない点について申し上げます。お詫びのメールであれば、責任ある立場の方が署名を添えて送ることが社会常識と考えます。『編集者が誤って使用した』とのご説明ですが、最終的な責任は編集者個人ではなく、御社を代表する責任者にあるはずです。よって、しかるべき立場の方から説明と謝罪を求めます。著作権侵害という重大な問題が発生しているにもかかわらず、発覚後に署名もないメールで『削除したのでお詫びします』で済ませる対応は、社会通念から著しく逸脱しています。」と、厳しい表現で返信した。

削除された動画は今、視聴することはできない

 ところが、再度、送られてきたメールも差出人不明であった。この時点でまともに話ができる相手ではないと判断せざるを得なかった。こうした対応を単に個人の資質にのみ原因を求めるのは正しくないのかもしれない。通常のYouTubeチャンネルは広告収入に依存しているため、コンテンツが削除されれば広告主や視聴者への説明責任が強く求められる。広告主からの信頼を失えば直ちに収益が途絶えるためである。

 しかし、文化人放送局は有料会員制サイトを運営しているようで、支持者からの「応援マネー」に大きく依存している可能性がある。穿った見方と言われるかもしれないが、外部の批判や一般ユーザーの信頼を軽視しても、コアな会員さえ残れば事業としては継続可能な構造と考える余地がある。

 そのため、言論機関としては致命的な不法行為と思われる著作権侵害が明らかになっても「チャンネルが閉鎖にさえならなければ大丈夫」と安易に考え、視聴者への説明や謝罪といった最低限の対応すら怠っていると思われても仕方がない。金銭面での支援者に対しても今回の”BAN”を「諸事情で」としか説明していなかったとしたら、それは深刻な問題であることを認識した方がいい。

◾️クリーン・ハンズの原則

 文化人放送局は「付度ない自由な言論活動」(同社HP)を標榜している。自らを「自由な言論を守る砦」と位置づけていると思われるが、やっていることは他者の著作権を侵害して自らの主張を行うという手法である。法律の世界ではクリーン・ハンズの原則(権利を主張する者は、自らの手もきれいでなければならない、という考え)が重視される。

写真はイメージ(AIで生成)

 当サイトは文化人放送局に対して何の恨みもない。それどころか、出演者の一人から出演を打診されたこともある。それでも今回のような態度に出たのは、著作権者として正当な権利を守るためであり、それが結果として表現の自由、報道の自由に資することになると考えてのこと。

 もちろん、大手のメディアが個人で運営している零細のサイトの写真を無断使用は、阿漕(あこぎ)という感情を抱かざるを得ないのも事実である。今回の件で被った損害は最終的に誰が負担すべきなのかは考えなくてはいけないのかもしれない。

 当サイトは今後もこうした権利侵害には厳しい態度で臨んでいく。文化人放送局がどのような主張をするのも自由であるが、ルールを守った上でなされなければならない。自由と責任は表裏一体。表現の自由、報道の自由は極めて重要な自由であるが、他者の権利を大きく侵害してまで行使することが許されるものではない。その基本を忘れたメディアに未来はないと、文化人放送局には警告しておく。

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