伊東市•田久保市長居座り宣言 地方自治の欠陥露呈

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 静岡県伊東市の田久保眞紀市長(55)が7月31日に記者会見を行い、いったんは表明していた辞職を撤回し、続投する意向を明らかにした。学歴詐称による公職選挙法違反の容疑に加え、有印私文書偽造・同行使、百条委員会への出席を拒否するなど、次々と違法と思われる行為を行い、何一つ疑惑には答えない態度を貫きながらも首長の座にとどまることができるのは、制度上の欠陥と言い得るのではないか。

◾️前言を翻しての続投宣言

会見する田久保市長(共同通信KYODO NEWS画面から)

 記者会見で田久保市長は、「私としては今後、市民の皆様との大きな約束である公約、新図書館建設計画の中止、伊豆高原メガソーラー計画の白紙撤回、これはもう私に与えられた使命。改めてその使命を、私の全身全霊を傾けて実現してまいりたい」と語った。あわせて一連の不祥事を「お詫び申し上げたい」としつつも、「結果で皆さんにお返ししたい」と述べ、続投の意欲を明確にした。

 田久保市長はこれまでに二度、辞職を口にしている。7月7日の会見では「すみやかに辞職し、出直し市長選挙に出馬する」と宣言。さらに18日には「今月中に辞職することが希望」と述べていた。それが28日の会見では「進退については、31日の会見で事実関係を整理した上でお伝えしたい」と発言を後退させた(ここまでSBS NEWS・辞めるの?続けるの? 静岡・伊東市の田久保真紀市長 進退表明の会見へ ”続投”の見方も浮上 参照)。この時点で続投に転じる可能性は強く示唆され、ネット上でも「辞めないのでは」とする声が多数見られていた。

 今回の問題は、公職選挙法上の学歴詐称にとどまらず、有印私文書偽造・同行使、百条委員会への出席拒否など、いずれも拘禁刑を含む重大な刑事責任を問われかねない問題にまで発展している。

 この日、千葉県の公務員の男性が、田久保市長に対し、有印私文書偽造等行使の疑いで伊東警察署に告発状を提出した。公職選挙法違反の告発状もすでに受理されている(FNNプライムオンライン・学歴詐称の田久保市長に対し新たな刑事告発 有印偽造私文書等行使の疑いなど 公選法違反の疑いを指摘する告発状はすでに受理され本格捜査始まる)。

 7月29日の百条委員会では、田久保市長と市民運動を共にしていたとされる人物が、「市長から大学は卒業していないと聞いていた」と証言。これは、田久保市長が「6月28日に東洋大学を訪れて初めて除籍を知った」とする説明を根底から覆すものである。市長は会見でこの証言について問われると、「私は言った覚えはない」と否定したが、本当に言っていないのであれば、百条委員会の場でそう証言すればよい。

 しかし、百条委員会での虚偽証言には地方自治法100条2項・7項により3月以上5年以下の拘禁刑が科される。証人は百条委員会で証言しているため、その危険を承知しているはず。田久保市長が百条委員会外の虚偽証言への罰則規定がない場でいくら語ったところで真実性は皆無に等しい。信じる者などいないと思われる。

◾️田久保市長の狙いは何か

写真はイメージ

 田久保市長は、市民に対して納得のいく説明を一切行っていない。言動の多くは虚言と前言撤回の繰り返しであり、犯罪行為が疑われる人物が市長であるという異常事態にある。

 こうした市長を辞めさせるには、住民によるリコール(解職請求)があるが、地方自治法81条により、就任から1年間は請求できない。今年5月29日に就任した田久保氏については、リコール可能となるまでに10か月近くを要する。

 一方で、市議会による不信任決議という手段もある。7月7日には、市議会が辞職勧告決議を全会一致で可決している。不信任案が提出されれば、全会一致となるかどうかはともかく、可決されるのは確実。

 ただし、不信任案が可決されると、市長には10日以内に議会を解散できる(同法178条1項)。あるいは辞職する場合もある(同145条)。仮に議会を解散した場合、新たな議会で再び不信任案が可決されれば、田久保市長は自動的に失職となる(同178条2項)。

 しかし、31日の会見で、田久保市長は自らの「使命」に言及し「全身全霊で実現していく」と述べており、自発的に辞職する可能性は低いと見られる。そうなると、議会が再選挙のリスクを負ってまで不信任に踏み切るかどうかが焦点となる。特に、選挙で田久保氏を支援した勢力に属する議員や、得票が下位だった議員にとっては再選が厳しくなり、慎重な態度をとる議員も出てくるかもしれない。田久保市長は、そのような議会の事情を見越して「続投宣言」に踏み切ったと考えられる。

◾️性善説の法体系を逆手に取る首長

 日本は民主主義国家であり、地方自治も憲法によって規定されている。そのため、地方自治体の長や議員の地位は厚く保障されている。憲法92条は「地方自治の本旨に基づいて法律でこれを定める」と明記しており、この「本旨」とは団体自治と住民自治を指す。

 前者は「地方公共団体が自らの事務を自律的に処理すること」、後者は「地域の事務を住民の意思に基づいて行うこと」とされる(市川正人『基本講義憲法』新世社、p.394)。市長に選ばれたということは、住民の信託を得たことであり、その地位が容易に奪われないのは筋が通っている。

田久保眞紀市長(伊東市公式サイトから)

 しかし、現在のように、経歴を詐称し、偽造書類を用い、真実を語るべき百条委員会への出席を拒否する市長が存在する状況を、果たして制度設計者は想定していたかは疑わしい。性善説を前提とした法制度を逆手に取り、自らの地位と利権を守ろうとしているのが、今の田久保市長である。

 こうして見ると、民主主義とはなんと非効率で、そしていったん信任を得た者の権利を奪うことがいかに難しいか、改めて思い知らされる。

 もはやこの問題は伊東市だけの問題ではなく、全国の地方自治体に共通する危機と考える。司法の手が早く及ぶことを願うとともに、伊東市議会が覚悟を決めて不信任決議を提出することを一有権者として願っている。

    "伊東市•田久保市長居座り宣言 地方自治の欠陥露呈"に3件のコメントがあります

    1. 野崎 より:

      松田さん

      おはようございます。

      >こうして見ると、民主主義とはなんと非効率で、そしていったん信任を得た者の権利を奪うことがいかに難しいか、改めて思い知らされる。

      話しは飛躍しますが、最近日本共産党の田村委員長が以下の発言をしました。(動画あり)
      ●究極的には国家の消滅を目指す。
      ●法律と言うのは国民をあるルールに従わせる部分が相当ある。
      そう言うのが必要なくなる社会を究極には目指す。

      私はファシスト共め!を連呼してきましたが、そして彼らの目的は近代国家を形成する価値観、既成秩序の破壊、国家の消滅(コスモポリタニズム、地球市民、全体主義)が目的だとコメントしてきましたが田村委員長、それをハッキリ公言された訳です、何故か、、

      彼らの破壊願望の要素の一つに民主主義の非効率がるのですね、そしてその中に彼らが認める大衆蔑視がある(明確に認めています)それは怒りであり攻撃へとつながる憎しみでもあります。
      そして又この制度(政治中枢、引いては国家)利用しを操る者達、彼らが言う支配層への怒り、憎しみがあると考えます。

      田村氏等は言葉だけではなく現実に実際に着実にその駒を進めています。
      移民問題(地球市民)においてもしかり、

      田久保氏に関しては刑事告訴の話はどうなっているのでしょうね?
      除籍であったことを自ら東洋大に確認した、よって卒業証書は贋作であったことを自ら証明した。
      広報に大卒表記の際、スタッフに卒業証書を垣間見せたとか、
      この行為は刑事的問題が発生しているのか否か、、

      仮に刑事告訴され有罪となった場合辞職義務はあるのか否か?
      辻元清美は自ら辞職した?
      辞職勧告決議案が採択されても議会解散や辞職義務は無いとのこと、刑事で有罪でも辞職義務はないとなれば、、制度を変えるしか、、自分の首を落とす制度を作る議員はいない、、

      よって一度仕組みを壊せ!国家は破壊せよ、法律も破壊せよ、か、そして自分たちのあらたな支配構造を!

      御返信は不要です。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        野崎様、いつもありがとうございます。僕も少なからず共産党の議員さんや党員を取材しています。

        >>彼らの破壊願望の要素の一つに民主主義の非効率がるのですね、そしてその中に彼らが認める大衆蔑視がある(明確に認めています)

        これはまさにそう感じます。うろ覚えですが、かつては「毛沢東の無誤謬性」みたいなことを言っていたように思います。そして、どんなに間違っていても決してミスを認めず謝罪しない、それは党が人民を指導するから、その党が誤謬があることを認めるわけにはいかないという考えがあるように思います。

        最近では共産党調布市議の不正アクセス事件がありましたし、本当にすくいようのない人たちだなという感想を抱いております。

    2. 野崎 より:

      伊東市百条委員会はテー脳の集まりである。

      東洋大学は、卒業していない者に卒業証書は発行しない、と公に表明した。
      本来(これは常識であり)表明する必要のない事をである。
      田久保市長への間接話法とも取れ又百条委員会への援護射撃と取っても良いかも、

      しかるに百条委員会の何たるか! そのテー脳ぶりは、、

      前に田久保市長は自ら卒業証書が贋作であることを証明したとコメントした。
      田久保市長は東洋大学に自ら確認し除籍であることを表明した。
      除籍者に卒業証書は発行されない、よって贋作であることを自ら証明した。
      しかして今般、東洋大学の表明である、これでダメ押し、卒業証書は贋作であることが明確になった。

      百条委員会の質問の何たる体たらくか、
      Q あなたが持っている卒業証書とされるものは何なのか?→まったくナンセンス
      A 卒業証書とされているものだと思います。      →と開き直られるに決まってる
      さらに本物の卒業証書のコピーを見せ無意味な質問をする、
      等々
      19秒程度見せたとか舐められたことを言われる。

      産経ウェブ 一部引用
      自身が持つ東洋大の「卒業証書」とされる書類に関する説明を求められ、「卒業証書とされていたものだと思っている」と回答した。

      質問する百条委の委員に対して、「申し訳ないが、質問の意図を簡潔にまとめていただきたいと注文する一幕もあった。

      >申し訳ないが、質問の意図を簡潔にまとめていただきたい。
      だよな、田久保市長に同意。

      簡潔とは以下だ。
      東洋大学は卒業していない者には卒業証書は発行しないと表明した。
      よって田久保市長が卒業証書とするものは贋作であることが明確に確定した。
      又田久保市長が開示しないことも贋作の証明である。贋作だから開示できないのだ。
      どこでどうやって贋作卒業証書を入手したのか。いえ!

      しかしあなたは答えず市長を辞任もしないだろう。
      よって公文書偽造同行使により刑事告訴する。

      これをもって議会を閉会する。

      だ。

      前にコメントしましたが告訴はされているのか否か?
      有罪となったとして市長辞職義務はあるのか?

      追記  週刊女性PRIME 一部引用

       杉本議員からの質問は40分ほど行われたのだが、ライブ中継のコメント欄では、

      《正直質問している方のレベルが低すぎて田久保市長が頭よく見える…笑》

      《何なんこの質問者》

      《質問下手なクセに悦に入ってて草》

       など、質問の質が低いという指摘が上がっていた。ほかにも、百条委員会に対し、

      《結局何ひとつ解明できない低レベルすぎる議会。田久保の圧勝だったな》

      御返信は不要です。

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