中居氏「”性暴力”の全貌」報道 読者欺く文春の手法

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 7日発売の週刊文春8月14・21日号が、巻頭で「中居正広”性暴力”の全貌が分かった!」というタイトルの記事を掲載した。フジテレビ元アナウンサーX子さんの代理人弁護士が中居氏宛に送った通知書を入手し、その内容を掲載したもの。これまで守秘義務の契約から明らかにされていなかった中居正広氏とX子さんとの密室でのやり取りを記述している。とはいえ、通知書の真贋が明らかでない上、仮に真正であったとしても女性側の言い分を記載したものにすぎず、客観的な事実と異なる可能性はある。それをあたかも全貌が判明したかのように報じる媒体の判断力、倫理観の欠如がうかがえる。

◾️記事の概要は「通知書」がベース

週刊文春と中居氏関連記事

 最新の週刊文春の巻頭記事は、「中居正広”性暴力”の全貌が分かった!」というタイトルで、「通知書に『不同意性交等罪』の文字が」というサブタイトルが付されている。

 内容は2023年6月2日、中居氏の目黒区のマンションを1人で訪れた元フジテレビ女性アナX子さんとの当日の出来事について記されている。両者が守秘義務を負っているため、フジテレビが設置した第三者委員会(以下、フジ第三者委)の調査報告書でも明らかにされていなかった部分である。

 記事の元となったのは週刊文春編集部に持ち込まれたA4用紙3枚の「通知書」(以下、本件通知書)である。2023年11月6日の日付があり、名宛人は中居正広氏、X子さんの代理人弁護士の名前と印鑑が押されていると報じられている。文書の真正性は不明であるものの、仮に真正であったとしても、両当事者の守秘義務にかかる部分であり第三者が入手することはできない。これを「X子さんの仕事仲間だった番組スタッフ」(同誌記事)が持ち込んだという。

 通知書に記載されている内容をもとに掲載された記事の核心部分の概略は以下の通りである。

(1)午前0時を過ぎようとしていた頃、中居氏がX子さんに繰り返しキスを行った。
(2)X子さんの下着をたくし上げ、その胸に顔を埋めた。
(3)X子さんの「やめてほしい」という声に行為を止め、ソファに座った。衣類を着け直すX子さんに、自らの下半身を短パンの上から触らせ、「これ、もうどうしてくれるの?」と言った。
(4)その後再びX子さんの衣類を捲り上げた。彼女は抵抗したものの、脱がされた衣類が手錠のように両腕を拘束し、身動きが取れない状況となり、中居氏は行為を遂げた。
(5)通知書は中居氏の一連の言動を「不同意性交罪等に該当しうる性暴力であり、不法行為」と指摘している。

 特に注目すべきは(5)である。中居氏の弁護団は「『性暴力』という日本語から一般的に想起される暴力的または強制的な性的行為の実態は確認されませんでした。」(中居氏弁護団の受任通知兼資料開示請求及び釈明要求のご連絡 p3)と主張しており、本件通知書の指摘と真っ向から対立している。この点こそがこの記事の最も問題視されるべき部分である。

 また、脱がされた衣類が手錠のように両腕を拘束したという点は、にわかには信じ難く、衣類を着け直している間があれば再び襲われないよう警戒するのが通常であることから、記事の客観性や合理性に乏しい点が見受けられる。

◾️読者を欺く週刊文春の手法

 本件で疑問に思えるのは、守秘義務にかかる核心部分を記載した通知書がなぜ流出したかであり、文書が真正であれば当事者のいずれかが守秘義務違反を犯したことになる。週刊文春はX子さんの仕事仲間が持ち込んだとしているため、X子さん側からの流出と考えるのが自然である。

 一方で、中居正広氏宛の通知書が記事の基盤となっている点にも問題がある。週刊文春は中居氏の弁護団が主張する「『性暴力』という言葉から想起される強制的な性的行為は確認されていない」という見解や、橋下徹氏の「失恋事案」というネット上の論調を根底から覆す「決定的な証拠」(同誌記事から)として本件通知書を位置づけている。

 元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、通知書の性格について「弁護士が事案を詳細に聞き取り作成したものである」とし、本件通知書は「当時の彼女自身の認識を示す重要な証拠であり、事案直後の当事者間のメッセージは嘘が入り込む余地が乏しく、裁判においても高い証拠価値を有する」(同誌記事から)と説明している。これにより通知書の信憑性が高いと示されているが、これこそが週刊文春が読者を欺く手法の象徴である。

 通知書は一方の言い分を弁護士が聞いてまとめたものであり、民事訴訟であれば双方の主張を裁判所が真偽を含めて判断し、権利の帰趨を決する。中居氏宛の通知書はX子さんの言い分のみを記したものであり、中居氏側の通知書があれば、「性暴力の実態は確認されない」という全く異なる内容となるのは明らかである。

 それにもかかわらず、これを無視して「性暴力の全貌」と断定するのは読者を欺く行為であり、正確には「X子が主張する性暴力の全貌」であり、客観的事実である保証はない。

 また、サブタイトルの「通知書に『不同意性交等罪』の文字がある」はX子さんの弁護団がそう考えているから記載しているに過ぎず、これも読者をミスリードしかねない表現である。

◾️男女で正反対の主張

 筆者はこれまで多くの同種事件を取材してきたが、男女の言い分が真逆となることは珍しくない。例として元TBS記者とジャーナリストの伊藤詩織氏の訴訟を紹介する。

 伊藤詩織氏案件は、就職の相談のために2人で飲食して、泥酔した伊藤氏が元TBS記者が投宿するホテルに入り、そこで性的関係があったというものである。この時に伊藤氏が性的交渉に及んだ経緯について、一審・東京地裁判決文で紹介されている。「被告(元TBS記者)は、原告(伊藤氏)が意識を失っているのに乗じて、避妊具を付けずに性行為を行い、原告が意識を取り戻し、性行為を拒絶した後も、原告の体を押さえ付けるなどして性行為を続けようとし、これにより、肉体的及び精神的苦痛を被った」(一審判決文から)というものである。

 ところが、元TBS記者によると、事実関係は全く異なると主張されていた。「原告(伊藤氏)は、就職活動について自分が不合格であるかを尋ねながら、左手で被告(元TBS記者)の右手を握り、引き込むように引っ張ったため、被告は原告と添い寝をする状態になった。原告は、再び就職活動に関し自分が不合格であるかを尋ねつつ、寝返りを打ちながら右足を被告の体の上に乗せた。そのため、被告は、悪印象を挽回しようとする原告に安心感を与えようとして、性交渉を始めた。」(同)(以上、参照・追い詰められた伊藤詩織氏 控訴審の行方)。

 このように原告はレイプされたかのように主張し、被告は女性からベッドに引っ張られ、足を体の上に乗せられて誘われて性行為に至ったと主張していた。どちらも前述の西脇弁護士が言うように「弁護士が事案を詳細に聞き取った上で作成された」ものであるのは言うまでもない。伊藤詩織氏のケースでは、少なくともどちらか一方は虚偽を述べているのは明らか。当然、「弁護士が事案を詳細に聞き取った」からと言って、それが真実である保証などない。

 週刊文春の記事が出た際に、中居氏の弁護団は声明を発表、冒頭「そもそも通知書というものは、書き⼿の⼀⽅的な認識を記載するものです 。」とその性質を説明しているのは、文春サイドのこうした読者を欺く行為に対する強烈な反論と言い得る。その上で「記事にある『通知書』なるものに記載されている表現・描写、 『不同意性交等罪に該当しうる性暴⼒であり、不法⾏為』等をはじめとした記載は、当職らの認識とは⼤きく異なるものです。また、当時を再現したかのような描写も、同様に異なるものです 。」としており、本件通知書の記述内容と客観的事実は異なることを強調している。

◾️ボディブローのように

イラストは本文と関係ありません(AIで生成)

 本件通知書は中居氏側に漏洩するメリットはなく、X子さんか弁護団のいずれかから漏れたことは確実である。弁護団からの漏洩ならば論外であるが、X子さんからの漏洩でも弁護団の責任は免れない。

 週刊文春が守秘義務にかかる通知書を記事にしたことは批判されて然るべきである。X子さん側から出された本件通知書を全て客観的事実であるかのように報じるのは、よほどのバカか何らかの政治的目的を有しているか、どちらかであろう。後者であるとは思うが、日本を代表する週刊誌が自らの質を落とすような報道は控えた方がいい。

 そして、おそらくX子さんサイドから本件通知書を漏洩させたのは、ネットを通じた世論が(何かおかしいぞ)という方向に向かい始めていることに焦りを感じ出しているように思う。中居氏側の根気強い反論がX子さん側(あるいはフジ第三者委側)にボディブローのように効いてきている証左のように思える。

    "中居氏「”性暴力”の全貌」報道 読者欺く文春の手法"に6件のコメントがあります

    1. 田中雪 より:

      記事を拝見しました。
      弁護士、マスコミからこれだけ一方的な悪者にするという記事はほぼ見かけません。
      何が動いてるのか恐怖さえ感じるので中居氏の
      精神的負担も大きいと思います。
      テレビ朝日の西脇氏には懐疑的な目で見ており
      ご存知かと思われますが、テレビ朝日の審議会
      委員長は幻冬舎の見城氏でもあり
      自身が今回のように検証する人達の一人として
      百田尚樹氏の殉愛というやしきたかじん氏の
      最期と妻について書かれてましたが内容は
      嘘ばかりでした。
      この本についてはやしきたかじん氏の唯一の実子が最高裁で勝訴しておりますが、謝罪は一切ありません。
      神戸元少年Aに絡んでもいる見城氏は大物政治家と
      懇意にしており、文春にも口を出せる人物であるので西脇氏が弁護士であろうがなかろうが
      こういった関係性もあり信用してません。
      吉村府知事は先の殉愛に絡んだ不正行為もしており裁判記録で陳述書を見た方からの報告
      更に近い立場にいた方から直接お話を伺っております。亡くなってから11年経ちますがご親族によるお墓も建てておりません。

    2. 吾輩は57歳男性、元公務員、医師である。弁護士資格はない。 より:

      文春は通知書の掲載にあたって、西脇弁護士のコメントを引用しながら、公益性と公共性に言及しています。民亊の名誉棄損の争訟に適用される刑法230条の違法性阻却事由3つのうち2つをあげている。文春は、撃てるもんならどうぞとう構えは明らかです。
      残りの事実相当性について、中居氏弁護団は、通知書は出所不明と事実相当性を否認している。であれば、名誉棄損で撃つべきではないでしょうか。撃てなければ文春の記事で事実確定でしょう。そして、中居氏弁護団は撃つことはできない。
      なぜなら法廷に出ていけば、通知書と同様の中居氏の行為の態様の詳細を記載した医師のカルテが重要な書証・法的文書として提出される。中居氏にとって、不都合な実が法廷記録として残る。
      青山さん、二次加害やめましょう!

    3. 野崎 より:

      >撃てなければ事実確定でしょう。
      ?何故一方の主張で事実が確定するのか、、
      確定するのは誰か?主語は誰か?

      中井氏が迎え撃てば不都合な実が法廷記録として残る。
      不都合の意味は何か?それが相手の主張、正当性を証明するとはいえない。

      二次加害とは何か?
      一次加害より発生した中井氏側にとり名誉棄損に該当する問題が争われている。
      それに関する第三者の見解は二次加害ではない。

    4. 匿名 より:

      >中居氏の行為の態様の詳細を記載した医師のカルテが重要な書証。

       
      これは一体なにを言わんとしているのでしょう?
      女性がすぐ医者に行っていれば同意・不同意はわからなくても、性行為はあったという証明になるかもしれない。しかし、それはしていない。
      どうして、通知書と同様のN氏の行為の態様の詳細を記載したカルテが作成できるのでしょう。

      1. 匿名希望 より:

        >どうして、通知書と同様のN氏の行為の態様の詳細を記載したカルテが作成できるのでしょう

        情報提供者が同じ(報告書のAさん)だからじゃないですか?あらためて、第三者委員会は一次情報が女性から出されたものだけで判断しているように感じます。

    5. 野崎 より:

      ●ちょいと一芝居打ったくらいでは簡単に世間をだませはしないよ。
      勝海舟 氷川清話

      事実確定するのは誰か?とコメントした。
      それは世間様という奴でしょう。

      お医者さんの言わんとする処は、
      どうだ中居氏よ反論できまい、これで世間の君に対するイメージは確定した。
      ということだろう。ザマァが付くか否かはおおよそだ。

      そうかな?
      故安部譲二氏は言う、芸能界、芸能人はこちらの世界の者達と。
      故ノーマンメーラーの鹿の園はハリウッドの実態を題材にした作品だ。
      鹿の園(しかのその)
      • フランス王ルイ15世のために開設したとされる娼館。
      • ノーマン・メイラーの小説(1955年)。ハリウッド映画界を舞台にする。

      で鹿の園、ハリウッドはMe tooとして公然の秘密が公然化した。
      世間様のイメージとして、芸能界という世界での出来事、
      女性も世間知らずの初心な女性という訳でもあるまい、全面的に受け入れられないな~的要素もあるだろう。(伊藤詩織しかり)

      リベラルファシスト共がこの件に関してダンマリなのはこの要素もあるかと、そしてファンという狂信的支持者達がいるのだ。
      ファン→狂信的に関しては以前、地元桜新町のとんかつ屋に4~50人の女の女性達が列を成していることに関しコメントした。
      韓国人アイドルグループがつい先ごろ食事をした店だからと、

      よってファンなる者には狂信的要素があると、それは又逆に冷めやすくもあるのだろうが、
      中居氏側に策士、良き参謀がいるならば、あながち逆転とは言わないまでも善戦は可能かと、
      相手は天下の文春砲だ、相手にとって不足なし又文春砲なる故その虚を利用、活用できる可能性も、

      医師、ジャーナリストである前に人としての価値観、矜持。

      松田氏がサイトを開設した当初。
      米国サン紙にサンタクロースはいるの?教えて、と投書した少女の事をコメントした、それに対する記者の姿勢は己の確固たる価値観、ジャナ―リストの矜持を持ってして真摯に答える姿は賞賛にあたいすると。

      では、お前はどうなんだ?と

      吾輩は医者でもなく弁護士でもない。(医者も弁護士もピンからキリさ)
      S24年生まれの大学紛争を経験した余命いくばくもないモロ団塊の世代の爺だ。
      バブル絶頂期の頃には資産100億に手が届くか、まで、神奈川県で資本金1億を超える会社は吾輩の会社を含め多くは無かった(不動産)
      不本意ながら抱え込んだラブホテル数軒、盛岡一とされたラブホJ&Bは吾輩の所有だった。
      だがしかしお師匠様、株の神様、お金儲けの神様,故邱永漢氏の戒めを無視し一敗地にまみれたアホウだ。
      地上げ屋、金融屋、ヤクザ共との悶着、六本木の高級SMクラブ、界隈の風俗のトラブルに介在し(女は買わない)、それを男の武勇伝と悦にいっていた知能程度アホウだ。

      だがしかし、この自由社会をファシスト共から何としても守らねばならないと思ってる。
      松田氏の一連の記事も中居氏擁護的意味ではなくジャーナリズムのあり方を問うているのだろう。

      若い衆達にこれをこれらを伝えておきたいと思う今日この頃、だがそろそろ時間ですよ、という心境であります。

      人を嘲る前に自らを省みる、おのず発する心の動きはいずこから、、
      伝えたく思っています。

      ヨハネによる福音書 8章7節
      汝らの内、罪なき者、まず石持てこの女を打て。

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